oldmanvitoriablog’s diary

Money and Energy

年金のリアル その1

定年退職し、年金を受給するようになって、いまさらながら年金を考えてみました。

年金と呼ぶものは、国民年金、厚生年金、遺族年金、障害年金、加給年金、付加年金、国民年金基金等いろいろな名称種類がありますが、ややこしいので基本は、国民年金と厚生年金なので、この二つを利用して理解したいと思います。

これから述べるデータは、厚労省日本年金機構、GPIFのHPから引用しています。

国民は保険料の納付によって、以下のように第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者に分けられます。

・第1号被保険者:20歳以上60歳未満の農業者、自営業者、学生、無職の人 などが対象     令和3年末現在約1,431万人、国民年金加入者、令和5年の保険料は月額16,520円.

・第2号被保険者:会社員、公務員などが対象、令和3年末現在約4,535万人、厚生年金加入者、現在の保険料は収入の18.3%固定(標準報酬月額30万円なら月額30 x 0.183 = 54,900円)従い、収入の多い人ほど負担額は多くなる。ただし、厚生年金保険料は、労使折半であるので、対象者の負担は、この金額の半分である。この金額には、国民年金保険料を含む(3号被保険者の分も含む)

・第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収       130万円未満)令和3年末現在約763万人、国民年金加入者。保険料は第2号被保険者が負担。

従い、約6,729万人が国民年金に、その内約4,535万人が厚生年金にも加入している、ということになります。日本の年金制度は、その時々の現役(主に20歳以上60歳未満の人たち)が収めた保険料によって、高齢者、障害者、遺族への年金を支給する賦課方式で運営されています。

年金制度の財政状況は、単年度ごとに、

収入=国民年金保険料+厚生年金保険料+国庫負担金(税金)+積立金からの補填(必要な   時のみ)

支出 = 基礎年金給付 + 厚生年金給付 + 積立金(余った場合のみ)

注)

1. 国民年金の支出は、その目的によって老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金、寡婦年金などの名称で支給されます。厚生年金の支出は、その目的によって、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金、加給年金などの名称で支給されます。

2. 国庫負担金は、国民年金の支出の1/2の金額を拠出します。一方、厚生年金では保険料の1/2を事業者(会社等)が負担しているので、厚生年金の支出の1/2を事業者が負担していることになります。

3. 積立金とは、支出より収入が多いとき(高齢者が少ない時代では、収入の方が多いので余剰金が出ていた場合が多いなど)余ったお金を積み立てているもので、この積立金を現在運用しているのが、2001年に設立されたGPIF(Goverment Pension Investment Fund, 年金独立管理運用行政法人)です。従い、GPIFの収支と、年金財政は別物で、GPIFの運用成績が赤字だとすぐに年金額が減ったり、年金制度が危機だという情報が出ることがありますが、事実とは異なる理解だと思います。実際、令和3年度(2021)の年金財政の収支は、

収入:54兆円、支出:53.7兆円、単年度収支残:0.3兆円となっており、一方、この年度のGPIFの年度初めの資産は233.9兆円で運用益11.9兆円でまったく別勘定です。従い、年金財政の年度末余剰金0.3兆円が、GPIFの収益11.9兆円とともに、12.2兆円がGPIFの次年度の運用資産に加えられることとなります。GPIFの資産は200兆円規模であり、年金の単年度使用額約50兆円の4倍の規模を持っています。GPIFは、このように、積立金を運用して、その収益で単年度の年金制度の収支を補完していますが、少子高齢化が大幅に進む将来、運用収益で補填できないときは、積立金そのもの(元本)を少しづつ取り崩しながら、おおむね100年後まで年金制度が安定して運営されることを目指しているということです。GPIFの2023年度第一四半期までの累積収益約127兆円で収益率は3.97%となっており、四半期ベースで赤字となることもありながら、それなりの収益を稼ぎ出していると言えます。ポートフォリオ(資産の運用配分)は、国内債券、国内株式、海外債券、海外株式を各25%づつという運用が基本です。

さて、実際に65歳からもらう年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)は、保険料に比較して得なのでしょうか?

老齢基礎年金は、基本は保険料月額16,520円(令和5年を使用)を、20-60歳まで納めますから、保険料支払いの合計は、約793万円。一方、老齢基礎年金の満額は、年間79.5万円(令和5年のものを使用)ですから、793/79.5 = 9.97年で支払った保険料分は回収できることになります。すなわち、老齢基礎年金は10年もらわないと、元が取れない、ということです。但し、仮に資金を運用できる人が、保険料を40年間年利2%で運用したとしたら、どうでしょう。40年後、保険料の累積は、約1197万円(1.652 x 12 x 60.402(年金終価係数))になりますので、この場合は、1197/79.5 = 15年もらわないと損をすることになります。とにかく、老齢基礎年金は少なくとも10年以上もらった方が良い、ということです。もらえる、老齢基礎年金額は、年金定期便で確認することができますが、金額の計算は、老齢基礎年金年額=79.5万円 x (保険料納入月数+保険料免除月数の換算月数)/(40年 x 12ヶ月)で求めることができます。別の記事にも書きましたが、老齢基礎年金の平均受給額は月5.6万円ですから、5.6 x 12 =67.2万円で満額より15%程度少ない金額になっているのが実情です。

老齢厚生年金は、基礎年金のように保険料が一定額でないので上記と同様な計算をして損得を納得することはでできませんが、筆者の年金定期便の保険料支払い総額からみると、やはり、老齢厚生年金も10年以上もらわないと元は取れないようです。