oldmanvitoriablog’s diary

Money and Energy

どうする我が家の空き家問題

定年退職する時期になると、悩ましい問題が次々に出てきますが、我が家にも「空き家問題」がありました。国交省住宅局の令和4年10月の資料によると、全国の空き家数は2018年データで約850万戸あり、その所有者の取得経緯は相続が55%、また、所有者の約30%が遠隔地(車・電車等で1時間超かかる)に居住となっていますが、まさに筆者の場合も、両親の住んでいた家(実家)と土地を相続で取得し、筆者は車で2時間以上かかる遠隔地に居住する状況です。日本人は持ち家率が高く、子供は同居しないで別に家を持つことが一般的になった(核家族化)ので、両親が亡くなると住んでいた家は空き家になる傾向が多くなり、我が家の場合も例外ではありませんでした。

筆者の場合は、相続してからもう30年近くになりますが、当初は月1回程度実家に帰り、戸や窓を開けて空気交換をし、庭の草や芝生を刈ったりしましたが、仕事もあることから、だんだんと足が遠のくようになってしまいました。それを見かねた親戚が、家を借りて野菜を作りたい(農家の空き家だったので周りに畑あり)という老夫婦を紹介してくれて、借りていただきました(水道、光熱費のみで良いとの契約で)。これで一安心でしたが、筆者の定年2年前に借り手の夫の方が亡くなってしまい、御遺族から貸借契約を解消したいと申し出があり、了解しました。この時期から、実家の家屋の傷みがすすみ、定年退職する頃は、台風がきたら屋根が飛ぶのでは?と思われるほどになりました。庭木の剪定も業者に頼んで費用が掛かります。この実家は、田舎にあり、交通の便も悪く(バス停までも徒歩20分)売れる土地でもないので、さてどうする、と日々悩みました。

空き家は、自分で使う予定が無ければ、相続後早いうちに売るとかの処分をするのが一番良いと、この時初めて悟りましたが、幼いときの思い出があり、何となく処分できないのが相続した身の心情で、それが、処分の時期を逸してしまったのでしょうね。相続して3年以内に売却できれば、3000万円特別控除という譲渡所得税の優遇措置が使えたりしますが、売れるとも思えなかったので、何もしないで過ごしてしまいました。

このままでは隣家に迷惑をかけることになるので、家屋は取り壊すしかないのは間違いないのですが、そうすると雑草だらけになり、毎年除草費用が掛かるので、お金が出ていくばかりになります。そこで、いろいろ調べた結果、実家の敷地に「太陽光発電所」を作ることにしました。当時、政府の再生可能エネルギーに対する補助金制度のFIT(Feed in Tariff, 固定価格買い取り)制度があり、太陽光で発電した電気は、Kwh当たり24円(税込み26円)で電力会社が20年間買い取ってくれることになっていましたので、筆者のエネルギー関係の会社に勤務していた実務の知見を活かして建設しようと決めました。こうすると電気の売り上げで、除草費用が十分に賄え、かつ、20年間のうちに十分投資資金を回収できると見込めたからです。空き家対策、収入増加、再生可能エネルギー増加に貢献と一石三鳥戦略です。

早速、3社(ネットで調べて選びました)に設置面積を連絡して設置可能な最大規模を検討させて見積を取りました。一方、実家の土地の地盤調査を業者に依頼して実施しました。このデータを渡して基礎の設計をさせるためです。太陽光のパネルは鉄骨で支えられ、その鉄骨は基礎(通常スクリュウー杭を使用します)に固定されますので、この杭の設計がきちんとしているかどうかで、地震や台風の時の倒壊、変形を防止できるかが決まります。(ということを実務経験から知っていたということです)1社は見積金額が高く、脱落し、2社が残り、金額は同額でしたが、一方は中国製の太陽光パネル、一方は日本製のパネルだったので、日本製のパネルを使用する業者に決めました。(実務経験上、中国品は品質が良くないという苦い経験があったので)

50kW未満(200Vの低出力電圧でよく、電気主任技術者を置かなくてよい容量以内にするため)の発電所ですが、経産省への事業者申請と電力会社への接続申請、電力会社による接続費用支払い、電柱設置などと実家の解体を含め、見積依頼開始から、1年3ヶ月で完成し、現在も順調に発電してくれています。(しかし、どうしても除草作業は毎年2回必要です。)本当にかき集めた投資資金が回収できるか、まだ、わかりませんが、太陽光発電は維持費が少ないので、希望はありそうです。毎月収入があるというのも良い点です。

筆者の空き家対策は、上のようなものでしたが、たまたまFIT価格が当初のkWh当たり40数円から下がってきてはいたのですが、設置を決めた時点でまだkWh当たり24円と投資回収できそうなレベルだったのが幸いで、今日では価格はkWh当たり10円になっているので、実施不可能な対策です。

令和6年4月1日より、相続した不動産の登記が義務付けられますので、相続した人は、自分で使うか、処分するかを決めて動かなければならなくなります。個人個人の選択はあると思いますが、自分や家族が使う予定が無ければ心を鬼にして相続から3年以内の売却の3000万円特別控除を使うのを第一候補として検討すればよいかと思います。一方、売るに売れない、処分もできない場合は、本年4月より開始した、国庫帰属制度(国に譲渡し、国が管理する)を利用することも最後の手として考えてみたらよいと思います。

筆者は実家の土地・家屋とともに、田舎の長男の宿命として、土地(農地)も相続しています。これについては、現在も悪戦苦闘しており、先が見えたところで、記事にしたいと考えています。