oldmanvitoriablog’s diary

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残念だった退職後の健康保険料

退職時に悩むことは、さらに働くか?退職金は一括か?の他にもあり、健康保険がその一つです。退職後も働く場合は、働く会社の健康保険に加入すればよいですが、退職して働かない人は、在籍した会社の健康保険組合協会けんぽ)に加入し続けるか(これを任意継続と言います)住所地のである市区町村が運営する国民健康保険に変更するか?という問題があります。他の選択肢としては、家族の健康保険(国民健康保険ではない)扶養家族になる、というのもありますがここでは上記の2つを比較します。なお、退職前は、保険料の1/2を会社が負担していましたが、退職後はいづれの場合も保険料は、自分で全額支払うことになります。

退職すると会社から、「健康保険資格喪失証明書」という書類が、発行されるので、それをもって、どちらにするかを決めて手続きすることになります。任意継続の場合は、退職後20以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出して手続きをする必要があります。国民健康保険に加入する場合は、14日以内に各市区町村の役所担当課にて早めに手続きすることになります。

ここで悩む点は、任意継続の場合は、2年間継続しなければならないという縛りです。途中で国民健康保険には変更できないのです。(筆者が退職したころは)国民健康保険は、前年の所得を基準に保険料を各市町村で決めますので、退職した年は、前年は給料を丸々もらっていますから、保険料は高い金額になります、一方、退職した翌年2年目は、前年にあたる退職した年1年目は収入がゼロなので、国民健康保険料は極めて少ない金額になるはずです。

任意継続の会社の健康保険(協会けんぽ)では保険料は、標準報酬月額(年間の給与を1/12したようなもの、実際は 4-6月の給与から算出して、会社員の方は、「標準報酬月額決定通知書」という紙を毎年夏頃、配布されていると思います)を基準にして、保険料率(%)を掛けて算出します。この時、標準報酬月額には上限があって、令和5年の上限は30万円です。(会社の健康保険組合によっては上限が異なる場合があるので、最終的には各自で上限を確認する必要があります。為念)

以上からわかることは、退職前年の年収が30 x 12 =360万円、約400万円より多い人は、退職後1年目は、任意継続の方が保険料は安く、2年目は、国民健康保険の方が、保険料は安くなる可能性が非常に高い、ということです。しかるに、任意継続は2年間変更できません(筆者が退職したころは)から、選択すると、2年目に多くの保険料を支払うことになるということがわかります。

(例)令和5年末に60歳で退職したの会社員で、その年の年収500万円で標準報酬月額41万円の場合を計算してみます。妻も60歳で専業主婦。市町村は、東京都中央区とします。(国民健康保険料率は中央区のHPより引用、任意継続は全国健康保険協会のHPより引用しています)

1.任意継続の場合(妻は専業主婦で扶養家族なので以下に含まれる)

  保険料率:11.82%(介護保険第2号被保険者40-65歳)

  標準報酬月額:30万円(41万円だが、上限30万円になる)

  月額保険料:30 x 0.1182 = 3.546 万円

  年間保険料:3.546 x 12 = 42.552 万円

  任意継続2年間の保険料:42.552 x 2 =85.104 万円

2.国民健康保険の場合

  1年目:基準となる所得;500 - 144 (給与所得控除)- 33(住民税基礎控除)= 323万円

                   (給与所得控除は国税庁タックスアンサーNo.1410より)

  ・基礎分(年額)

    均等割:4.5 万円 x 2人= 9万円

    所得割:323万円 x 0.0717 = 23.1591 万円

    小計:32.1591 万円

  ・後期高齢者支援分(年額)   

    均等割:1.51万円 x 2人= 3.02万円

    所得割:323万円 x 0.0242 = 7.8166 万円

    小計:10.8366 万円

  ・介護分 (年額)

    均等割:1.62 万円 x 2人= 3.24万円

    所得割:323万円 x 0.0207 = 6.6861 万円

    小計:9.9261 万円

         合計保険料:52.9218 万円(年額・・・任意継続より約10万円多い)

  2年目:基準となる所得はゼロ  

  ・基礎分(年額)

    均等割:4.5 万円 x 2人= 9万円

    所得割:0 万円

    小計:9万円

  ・後期高齢者支援分(年額)   

    均等割:1.51万円 x 2人= 3.02万円

    所得割:0 万円

    小計:3.02 万円

  ・介護分 (年額)

    均等割:1.62 万円 x 2人= 3.24万円

    所得割:0 万円

    小計:3.24 万円

         合計保険料:15.26 万円(年額・・・任意継続より約27万円少ない)

         2年間合計保険料:52.9218 +15.26= 68.1818 万円(任意継続より約17万円少な 

  い)

以上の通り、国民健康保険は退職後の1年目の保険料は高いが、2年目は、グンと安くなります。従って、ある程度年収のある人は、1年目は任意継続、2年目は国民健康保険に加入するのが、退職直後2年間の健康保険料を少なくする基本的な考え方と思います。(国税庁が発表した「令和3年分民間給与実態統計調査」によると令和3年の平均年収は443万円ですから、上記の計算に近いところに通常の給与所得者はいると思われます。任意継続は2年間継続が必須ですが、後述の通り、今は1年で辞められるようになっています。)

筆者は、退職時、健康保険は、まあそのままでいいかな、と単純に考え、任意継続を選択しました。上記のような計算を知っていれば、国民健康保険を選択したかもしれないと思うと残念でした。退職3年目に国民健康保険に加入して、保険料がぐっと下がって「何だこりゃ?)と思ったことを記憶しています。保険料が前の年の半分以下になっていたので、びっくりでした。(あーあ損したなー!!!!というのが実感でした。)

ここで現在の退職する人へは朗報があり、上記の通り、筆者が退職したころは、任意継続は2年間継続しなければなりませんでしたが、令和4年の法改正により、令和4年4月1日以降「本人希望による保険者(会社)への申し出」により、任意継続から脱退することができるようになりました。従い、上記のような1年目は任意継続、2年目は国民健康保険に加入することができるようになりましたので、これから、退職する方は、よく検討されたら良いと思います。

インターネットには、任意継続と国民健康保険の保険料を比較できるサイトがあり、上記のような計算を簡単にやってくれますので、すぐに検討できるようです。(ご参考まで)