oldmanvitoriablog’s diary

Money and Energy

エネルギーの話 その7 火力原子力発電はなぜ効率が悪いのか?

火力発電は、燃料をボイラという圧力鍋の下で燃やし、その熱でお湯を沸かして、蒸気を作り、噴き出して、蒸気タービンの羽根に吹き付け機械的な回転運動をさせ、結合した発電機を回して電気を作るシステムで、蒸気タービンから排出される蒸気は復水器という熱交換器で冷却水により冷やされて水に戻り再びボイラに戻されます。これをランキンサイクルと言います。ボイラの代わりに原子炉を置いて、ウランから作られた燃料棒の発熱を利用して蒸気を作り発電するのが、原子力発電です。ボイラまたは、原子炉から得られる蒸気の持つ熱エネルギーは、約800 kcal/kg(kg当たりの熱量)程度です。一方、蒸気タービンで仕事をした蒸気の持つ熱エネルギーは約500 kcal/kgで、これがもっと低い熱量であれば、もっと仕事をして電力を発生することができるのですが、それは不可能です。その理由は、この熱量には、水の潜熱(蒸気から水に戻るために冷却水で冷やされなければならない熱量=約500kcal/kg)を含んでいるからです。従って、この発電所で利用されるエネルギーは800-500=300kcal/kgで、蒸気の仕事で発電する発電効率は、300/800 x 100=37.5% 約40%程度になります。よって、残りの60%の熱は、冷却水で持ち去られるとともに、ボイラの排気ガスで排出されます。このように、発電所のボイラ+蒸気タービンシステムでは発電効率は、40%程度です。石油や石炭、LNGを使用したボイラでは200kg/cm2を超える圧力や500oCを超える温度にでき、効率は40数パーセントまで高くできますが、原子力の場合は、圧力容器の制約から65kg/cm2 x 350oC程度の圧力・温度にしかできないためにその効率は33%程度の低いものになっています。

一方、もう少し発電効率を高めたシステムもあり、それが「ガスタービンコンバインドサイクル発電」と呼ばれるもので、まずガスタービンLNGなどの燃料を燃やして発電し(航空機のエンジンに発電機がつながっていると想像するとわかると思います)この排気ガスはまだ500oC程度の高い温度なので、これを使って熱交換器(排ガスボイラHRSGと言います)で蒸気を発生し、蒸気タービン発電機に導入して発電する二重の発電ができるシステムで、発電効率ガスタービン発電機30%, 蒸気タービン(1-0.3) x 0.4=28%で合計58% 約60%程度まで発電効率を高められます。それでも燃料の40%は捨てられることになります。

このように発電所発電効率は、50%前後になりますので、エネルギーの話その2で述べた日本の全体の発電効率が42%となるのは、上記の50%より高い発電所と、50%より低い発電所が混在している結果を平均したものです。

もっとボイラ出口の蒸気を高温・高圧にして蒸気の持つ熱量を高めることができれば、発電効率も高められますが、高温・高圧になるとボイラや蒸気タービンの材料もそれなりに高度なもの、または、適する材料がないこともあり、限界があります。