2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」によると、2030年の電源構成(エネルギーミックス)は、2019年と比較して示すと以下のようになっています。
2019年 2030年
総発電量(億kWh) 10,240 9,340
再エネ(%) 18 36-38
原子力(%) 6 20-22
LNG(%) 37 20
石炭(%) 32 19
石油等(%) 7 2
水素・アンモニア(%) 0 1
ここで、現在の状況と矛盾する点があると思われるのは、原子力発電(原発)の割合です。
上記の数値から、100万kW級の原子力発電所の必要数を計算すると:
2019年 2030年
原発の発電量 614.4 1868 - 2054.8
(億kWh)
利用率(%) 70 70
年間時間(時間) 8,760 8,760
100万kW級原発 10 30 - 34
必要数(基)
2023年10月27日現在の原子力発電所の稼働状況は:
再稼働中(基数) 12
設置変更許可(基数) 5 (稼働はしていない)
新規制審査中(基数) 10(稼働はしていない)
未申請(基数) 9 (稼働はしていない)
廃炉(基数) 24
未申請を除くと、27基しかありません。これから申請しても2030年まで、7年しかありませんから、30-34基が必要な2030年の上記電源構成計画には、明らかに間に合わないと推定されます。ということがわかっていながら、このような計画を決めているところに、国のエネルギー政策は現実とあっていないのではないかと疑問です。
福島原発事故以来、原子力発電には好意的な見方は少なく、何よりその安全性について疑問符が付いたままであることが大きな原因です。
100%安全なものは、この世に存在しないのです。事故が起きてもその範囲が限定的であることから、さまざまな機械、プラント、システムが稼働しているのが現状ですが、原発は事故が起きると、その影響範囲が限りなく大きく、期間も何十年単位になることから、安全面から見れば、地震国であるこの国には、なじまないシステムであると言えます。加えて、核燃料サイクルも六ケ所村の再処理設備の稼働が見通せない状況であるし、使用済み核燃料の保管場所もないことから原発稼働による、使用済み核燃料の増加対策も見通せないし、核廃棄物の最終処理場所も確保されていませんので、脱炭素でクリーンエネルギーを最終目標とする方向には、合致しないシステムと思います。
よく原子力は発電単価が安いと言いますが、原子力発電所の減価償却年数は15-16年で、それを超えると発電単価に減価償却費用が加えられなくて済むので安くなるので、年を取った原発を再稼働すれば、電力会社の利益は増加するのは当然です。一方で、H社が英国で、M社がトルコでコスト高を理由に新規原発から撤退した事実は、新規の原発の発電単価は、必ずしも安くないことを示しており、海外では、原発の発電単価はもはや火力や再エネよりも高いというデータもある状況です。