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相続の基礎3 遺産分割の方法

被相続人の相続財産が、すべて金銭の場合は、相続人の間で分け合うことは難しくありませんが、不動産(土地や建物)のように相続人の数で割って分割するのが難しい場合、以下の分割方法があります。
1.換価分割
  「換価分割」とは、共同相続人(相続人全員)が相続した遺産の全部または一部を金銭に替えて(売却等して)分割する方法です。
被相続人の土地や建物を売却した場合は、売却により利益(売却代金ー取得費ー手数料で計算します)が出た場合は譲渡所得の課税対象となります。相続の場合は、条件を満たせば、取得費に相続税の一部を計上できるために、売却による利益を少なくして所得税を軽減することができます。その条件とは:
①相続または遺贈(死んだらあげるよ、という約束)によって取得した財産であること。
②相続時に相続税が課されていて納税していること。
③相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に売却していること。
なお、被相続人のその不動産を所有していた期間は関係ありません。
すなわち、この方法は、遺産分割協議(誰がどの遺産を相続するかを決めるもの。相続税の納付は相続開始から10ヶ月以内なのでそれまでに決める必要があります)が終了して、相続税を計算して、相続税を納税した後に売却して、相続人の間で相続財産を金銭で分割する方法です。
例えば、相続財産として、不動産9000万円、預金5000万円だったとして、相続人は、配偶者と子供2人とすると相続税は、法定相続割合で相続したとして計算し、1310万円となります。この場合の取得費に加算できる相続税は、1310 x 9000/14000=842万円となります。(相続財産の合計14000万円の内の不動産9000万円分と言うことです)
この不動産の購入価格が、8000万円、売却価格が12000万円、手数料が300万円の場合、譲渡益=12000ー8000ー300ー842=2858万円, 税金は20.315%ですから、580万円の税金を納付することになります。取得費加算の特例を利用しないと、譲渡益3700万円となり、税金は752万円となり、172万円多くなります。
このように換価分割を適用する場合には、遺産分割協議が終わり、相続税を納入した後に不動産を売却して、お金に換えて分け合うことになるので、相続開始から一年程度はかかることになります。
2.代償分割
  「代償分割」とは、共同相続人の内の特定の相続人が相続財産そのものを取得して、ほかの相続人には、自己の固有財産で支払う方法です。
代償分割のポイントは:
①代償で交付する(支払う)財産を遺産分割協議書に記載する必要がある。記載せずに交付すると贈与税の課税対象となってしまう。
②代償分割として土地等を交付した場合、譲渡したことになり、所得税が課税される。この場合は、換価分割と異なり、相続税の取得費加算の特例は適用できない。
③代償分割により他の相続人に対して債務を負担した相続人の相続税課税価格は、取得した財産の評価額から代償債務を控除した金額となる。代償債務とは、代償分割で、相続人の一人が、他の相続人に支払った金銭や不動産の価額のこと。
④代償債務の金額は
 a. 代償債務を交付した金額でそのまま差し引く方法
 b. 時価相続税評価額ベースに換算する方法
のいずれかが用いられる。
例えば、相続人Aが、土地(相続税評価額4億円、時価5億円)を相続ずる代償として相続人Bに2億円を支払った場合の課税価格の計算は、
a. の場合:代償債務をそのまま差し引いた課税価格は
 A:4億円ー2億円=2億円(代償債務2億円をそのまま控除)
 B:2億円(現金取得額)
b.の場合:時価相続税評価額ベースに換算した場合課税価格は
 A:4億円ー2億円 X 4/5=2億4000万円
 B:2億円 X 4/5 =1億6000万円
 この場合も、A+Bの相続税評価額の合計は4億円で同じ。合計相続税は同じ。
このように不動産等で分割が難しい場合は、面倒な手続きをする必要があります。