エネファームの経済性を検討したついでに、家庭用の屋根に設置する太陽光発電設備についても、平均的なもので経済性を検討してみました。
条件:①既設の戸建ての屋根に設置するものとする。
②蓄電池は設置しないものとする。
③余剰電力はFIT価格にて10年売電する。(FIT:固定価格買い取り制度)
太陽光発電利用率(%) 注1): 13.7
家庭の平均的年間電気使用量(kWh) 注2): 4,258
採用太陽光発電設備容量(kW) : 4.0
推定年間発電量(kWh) 注3): 4,800
太陽光発電設備設置費用単価(万円/kW)注4): 28.1
太陽光発電設備設置費用(万円): 112.4
購入電力単価(円/kWh)注5): 35.0
太陽光を設置しない場合の年間電気代(万円/年): 14.9
太陽光設置後利用割合(昼間)(%) 注6): 40
太陽光設置後利用電力量(昼間)(kWh) : 1,703 (4258 x 0.4)
太陽光設置後購入電力割合(夜間)(5) 注6): 60
太陽光設置後購入電力量(夜間) (kWh) : 2,555 (4258-1703)
太陽光設置後購入電力代金(万円/年): 8.94 (35 x 2555)
太陽光余剰電力売電量(kWh) 注7): 3,097 (4800 - 1703)
余剰電力売電単価(円/kWh) 注8): 16.0
余剰電力売電収入(万円/年): 4.96 (3097 x 16 / 10000)
太陽光発電設置後メリット(万円/年): 10.92 (14.9-(8.94-4.96))
太陽光発電設備設置費用の回収年(年) : 10.3
注1)太陽光発電利用率(%)とは、一年の内、容量100%で運転する時間を年間総時間(8760時間=12 x 365)で割ったもの。気象庁の各地の年間の日照時間は2000時間前後で、この時間が太陽光で発電できる時間ですが、朝夕は太陽の高度が低く、太陽光パネルに垂直程度に当たらないので、容量より小さい容量で稼働することを考慮すると、年間日照時間の60%程度の時間が100%容量相当で稼働する時間と考えられます。従い、1200 x 0.6 / 8760 x 100 =13.7%になります。この数字は、資源エネルギー庁「太陽光発電について2022年12月」の想定値と同様です。
注2)家庭の平均的年間電気使用量(kWh)は、環境省の「令和2年度家庭部門のCO2排出実態統計調査資料編」より引用しました。通常、家庭の消費量は3000-6000kWhです。
注3)推定年間発電量(kWh)は、4kW x 8769時間 x 13.7%で計算されます。
なお、kWは容量を示し、kWhは電力量を示します。1kWの電気を1時間使用したものが1kWhの電力量になります。
注4)太陽光発電設備設置費用単価(万円/kW)は、資源エネルギー庁「太陽光発電について2022年12月」の既設設置費用から引用しました。
注5)購入電力単価(円/kWh)は、資源エネルギー庁令和5年6月27日記事「2023年6月の電気料金、なぜ値上がりするの?いくらになるの?」より引用。従来はkWh当たり27円から30円程度でしたが、今年2023年は値上がりしたので、それを反映しました。
注6)太陽光発電は太陽のある昼間しか、稼働しませんし、蓄電池もないので、昼間の間発電した電気を利用することになります。一方、家庭の電気利用は、昼夜あり、共働き、専業主婦、高齢者宅では条件が異なりますから、平均的な割合として昼間の使用量と夜の使用量を4:6としました。(住環境政策研究所H25年9月「平成25年度家庭における電力諸費用調査報告書」より推定しました。)
注7)太陽光余剰電力売電量(kWh) は、太陽光が年間発電する電力量から、昼間に太陽光を使う電力量を引いた電力量になります。
注8)余剰電力売電単価(円/kWh) は、2023年のFIT制度の買い取り単価を使用しました。
上記の計算結果より、投資回収に10.3年かかり、FIT制度の期間10年(家庭用太陽光は10年です)を超えるので、投資回収面では採用不可です(設置しない方が良い)。10年以下で回収するには、設備費用が27万円/kW以下でなければだめです。
エネファームと同様、どうも日本の省エネ対策機器は、値段がまだ高いので、もう一段のコストダウンが必要と考えられます。
一方、東京都は、家庭用太陽光発電設置に対して、補助金を出しています。東京都環境局HPによると4KWの場合、kW12万円の補助金で、48万円出ますので、上の設備費用は、112.4-48 = 64.4万円となり、従い、投資回収年は5.9年となり、十分なメリットが出ることになります。東京都の補助金は、すごいですねー。
ということで、東京都の住民の方は、平均的に太陽光発電設備を住宅の屋根に設置するほうが得であると考えられます。一方、東京都外の住民の方は、ちょっと悩ましいので、上記のように平均的な条件で計算するのではなく、自宅の実際の電力消費量、購入電気代の単価等を確認して、上記と同様な計算をしてみる必要があります。
なお、上記は、手に入る平均的な条件で計算しており、すべての家庭用太陽光発電設備に当てはまることを保証するものではないことをお断りしておきます。