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改正相続時精算課税制度 改正1

相続が発生する前に、遺族(子供や孫)に財産の早期をする方法として、「相続時精算課税制度」と「暦年課税」があります。前者は、相続が発生する前に被相続人から相続人または孫に贈与をして、累計一定の金額2,500万円まで贈与税を課さずに、(2500万円を超えた分については一律贈与税20%が課されます)相続が発生した時に相続財産に加算して税金を精算する、というものです。後者は、毎年110万円以下の贈与は課税されない制度で、それを超える金額には贈与税(課税金額により税額は異なる)が課される制度です。相続時精算課税制度は一度選択すると、暦年課税には戻せません。
贈与する人(贈与者)の条件は;
・贈与年の1月1日時点で60歳以上の父母または祖父母など
贈与される人(受贈者)の条件は;
・贈与年の1月1日時点で18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人または孫
です。
令和5年(2023年)までの制度で計算してみると;
例えば、70歳の父親から、25歳の息子に毎年以下の金額を贈与した場合;
2024年 2025年 2026年 2027年 2028年 2029年 2030年 2031年 2032年
200   300          100          100         500         600          700         300         200
万円  万円  万円         万円      万円    万円     万円     万円     万円 
2024年に相続時精算課税制度を選択して所轄税務署に届け出たとすると、2024年から2030年までの贈与金額の累計が2500万円になります。従い、以降の2031年には300 x 0.2 =60万円、2032年には200 x 0.2 =40万円の贈与税が課税されます。また、2500 + 300 + 200 =3000万円が2033年以降に相続が発生(父親が死亡)した場合に相続財産に加算され、遺産分割してその息子に掛かる相続税からすでに払った贈与税60+40 =100万円が控除されます。控除しきれない(相続税額が100万円より少なかった場合)贈与税分は還付されます。
一方、上の例で暦年課税だった場合は、各年の110万円を超える分に贈与税がかかるので、
2024年 2025年 2026年 2027年 2028年 2029年 2030年 2031年 2032年
90     190          0             0              390         490         590         190         90
万円  万円  万円         万円      万円    万円     万円     万円     万円 
が110万円を超える金額になるので、贈与税がかかり、国税庁贈与税速算表より以下の贈与税がかかります。
2024年 2025年 2026年 2027年 2028年 2029年 2030年 2031年 2032年
9             19            0             0             48           68            88           19           9
万円  万円  万円         万円      万円    万円     万円     万円     万円
合計贈与税260万円を納税することになります。また、2033年以降に相続が発生した場合は、その前3年以内の贈与金額を相続財産に加算して相続税を計算しますので、700+300+200=1200万円が相続財産に加算されます。
このように上の例では、相続時精算課税制度を選択すると、贈与を受けたときの贈与税は100万円ですが、相続時は3000万円が相続財産に加算されます。一方、暦年課税では贈与された時の贈与税が合計260万円と相続時精算課税制度を選択した場合より多くなりますが、相続財産に加算される金額は1200万円と大幅に少なくなります。これが、令和5年までの制度利用による計算結果です。暦年課税の方が相続財産に加算される金額が少ない分、有利に見えます。

令和6年(2024年)1月1日以降に相続時精算課税制度を選択して贈与を受けた場合は、優遇措置が改正により追加されます。
・暦年課税の基礎控除額と同じ金額110万円が毎年の贈与額から控除されます。
・相続時に加算する金額もこの基礎控除額を控除した金額になります。
(別記事で筆者は、暦年課税と併用と書きましたが、正確には追設で併用ではありません。お詫びして訂正します)
一方、暦年贈与については、相続時の加算が増加します。
・相続時に加算される期間が相続発生前3年から7年に延長され、延長した4年間の贈与の合計額から100万円を相続財産への加算から除外します。(7年まるまる対象となるのは令和13年(2031年)以降です。)

上の例で改正後の計算をしてみます:
(暦年課税の相続時加算が7年になるのは2031年以降ですが、ここでは、7年になった後として計算します)
相続時精算課税制度を選択した場合、改正後は各年の贈与金額から110万円を引きますから、上の暦年課税の毎年の超過金額と同じになり
2024年 2025年 2026年 2027年 2028年 2029年 2030年 2031年 2032年
90     190          0             0              390         490         590         190         90
万円  万円  万円         万円      万円    万円     万円     万円     万円 
従い、2033年以降の相続開始の場合開始前合計金額は2030万円になり、2500万円より少ないので、改正前に超過分にかかった贈与税100万円が無くなります。2033以降に相続が発生した場合、相続財産に加算する金額も各年の控除額を引いた金額で2030万円が加算されることになり、従来の3000万円より大幅に少なくなります。
一方、暦年課税の場合は、毎年の贈与分にかかる贈与税は同じで260万円、2033以降に相続が発生した場合、相続開始前3年分の贈与分1200万円にさらに4年分の100+100+500+600=1300万円から100万円を引いた額1200万円が加算され、合計2400万円が相続財産に加算されます。

上の例では、改正後の相続時精算課税の方が、贈与税は無くなり、相続財産に加算する金額も2030万円で、暦年課税の贈与税260万円に相続時相続財産加算額2400万円で、相続時精算課税制度を選択した方が有利になります。従来の制度に比較して、相続時精算課税制度の優位性が増したように見えます。

改正1:改正後の相続時精算課税制度を利用する場合、選択した後、毎年110万円以下の贈与にしておくと、毎年ゼロ円で2500万円には全く達しない(ゼロ円)ので、贈与税はかからない、また、相続発生時にも、相続財産に加算する金額もゼロ円となり、暦年課税のように相続前7年分の贈与金額が加算されることもなく、暦年課税よりも有利になります。

実際には、上の例とは異なりますので、個々のケースで試算してみて、有利な制度を利用するようにしたら良いと思いますが、相続時精算課税制度を選択しても暦年課税と同様な基礎控除(110万円)が受けられることを考えると相続時精算課税制度の選択が有利ではないかと考えます。いずれも相続による税負担を軽減する制度ですので、相続財産に余裕がありそうな家庭では、親子で話をして検討されたら良いかと思います。